墓じまいと散骨の手引き

承継者がいないお墓の墓じまい 無縁改葬の条件と官報公告、永代供養・合葬墓への移し方

内容の確認日: 2026年11月4日

お墓を継ぐ人がいないことと、縁故者が1人もいないことは、別の状態です。法令にある「無縁改葬」は、死亡者の縁故者がいない墳墓が対象で、官報への掲載と1年間の立札の掲示を経る手続きです。継ぐ人がいなくても、今の墓地使用者が元気なら、自分で通常の改葬許可を取って墓じまいをする道が基本になります。

この記事では、無縁改葬の条件と流れを施行規則の条文と川崎市の資料で確かめ、自分で永代供養や合葬墓に移す場合の手順と生前に決めておく点を整理します。この記事は一般的な情報で、個別の判断は墓地の管理者や市区町村の窓口、行政書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

承継者がいないことと「無縁」は同じではない

東京・銀座にある墓地の墓石
写真: gruntzooki / CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons)

墓は、祭祀を主宰する人(祭祀承継者)が引き継ぐものです。厚生労働省の事務連絡は、墓石などの所有者が亡くなったときの承継者を、民法第897条にもとづき次の順で定まると説明しています。

  1. 被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者
  2. 慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者
  3. 家庭裁判所が指定した者

承継者がいない理由はさまざまです。子がいない、子が遠方に住んでいて継がない、といった場合があります。総務省の東北管区行政評価局の資料は、承継者がいない等の理由から使用者が自発的に墓地を返す、いわゆる墓じまいに改葬許可が必要としています。全国の改葬件数は、平成26年度の約8万4千件から令和6年度の約17万6千件へ、ほぼ倍になっているとも書かれています。

ここで分かれ道があります。

  • 墓地使用者や親族がいて、自分たちで墓を閉じる: 通常の改葬許可を取ります。申請書の書き方は改葬許可申請書の記事にあります。
  • 使用者が亡くなり、縁故者も見つからない: 墓地の管理者(公営墓地なら自治体)が、無縁改葬の手続きを検討します。

この記事の前半は後者の仕組みを説明します。後半は、前者として自分で墓じまいをする人向けの内容です。

無縁改葬の条件と、施行規則第3条の公告

画面にひびが入ったノートパソコン
写真: Mr.ちゅらさん / CC0(Wikimedia Commons)

墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第3条は、死亡者の縁故者がない墳墓または納骨堂を「無縁墳墓等」と呼びます。その遺骨の改葬の許可申請には、通常の添付書類に加えて、次の書類が必要です。

書類条文の内容
写真と位置図無縁墳墓等の写真と位置図
公告したことの書面死亡者の本籍と氏名、墓地使用者等、縁故者、墳墓に関する権利を持つ人に対し、1年以内に申し出るよう官報に掲載します。無縁墳墓等の見やすい場所の立札にも1年間掲示します。その期間中に申し出がなかったことを書いた書面です。
官報と立札の写し官報を出力した書面や電磁的官報記録を書いた書面の写し、立札の写真
その他市町村長が特に必要と認める書類

官報の公告と立札の掲示は、どちらも1年間です。期間中に申し出があれば、「申し出がなかった」と書く書面が整いません。申し出がないまま期間が過ぎて、はじめて無縁改葬の許可申請に進みます。

条文は縁故者の範囲を細かく決めていません。どこまで調べるかは、墓地の管理者と許可を出す市町村の運用に左右されます。川崎市の例は、次の節で見ます。

川崎市の資料で見る無縁改葬の流れ

京都市下京区役所の庁舎
写真: J o / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

川崎市は、市営霊園(緑ケ丘霊園と早野聖地公園)で無縁改葬を実施するにあたり、平成24年に「無縁化した墓所の整理の考え方(案)」を示してパブリックコメントを行いました。以下は、その資料に書かれた内容です。案の段階の資料なので、現在の運用は川崎市の霊園事務所に確かめてください。

対象にする墓所は、次の3つをすべて満たすものとされています。

  • 墓地使用者が、墓地管理手数料を3年以上納めていない
  • 墓地使用者が亡くなっているか、居所が分からない
  • 血族3親等・姻族3親等の縁故者調査をしても、祭祀承継者が現れない

流れは次の順です。

  1. 無縁改葬公告(官報掲載と立札の掲示、1年。施行規則第3条第2号)
  2. 墓地使用許可の取消し(川崎市墓地条例)
  3. 改葬許可の申請
  4. 遺骨の改葬
  5. 墓石などの撤去
  6. 墓所の再募集

遺骨の扱いも書かれています。川崎市の案では、標準的な大型の骨壺から小さな3寸壺に入れ替え、20年間は個別に収蔵します。この間は縁故者の引き取りの希望に応じます。20年のあいだに申し出がなければ、ほかの遺骨と合葬する計画でした。

墓石の扱いについて、厚生労働省は令和7年12月8日付けの事務連絡で考え方を整理しています。公営墓地では、使用規則を定める条例等に定めがあれば基本的にそれに従うとされています。いずれの扱いにしても、使用許可の取消しなどで墓地使用権が適法に消滅していること、無縁改葬そのものが適法に行われていることが前提だと書かれています。

民営の墓地や寺院墓地の場合は、この資料の手続きがそのまま当てはまるとは限りません。管理者に、無縁になった墓の整理の決まりがあるか確かめてください。

自分で墓じまいをして永代供養・合葬墓へ移す

京都・知恩院の隣にある墓地
写真: Basile Morin / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

墓地使用者が自分で墓じまいをするなら、通常の改葬許可の手順になります。大まかな順番は次のとおりです。

  1. 改葬先(永代供養墓・合葬墓など)を決め、受入れの書類をもらう
  2. 今の墓地の管理者から、埋蔵の事実を証する書類をもらう
  3. 墓地のある市町村で改葬許可を申請する
  4. 許可証を持って遺骨を取り出し、改葬先の管理者に提出する
  5. 墓石を撤去して区画を返す

管理者が証明書を出してくれないときは、墓石の写真や、出せない経緯を書いた申述書といった代わりの書面が認められる場合があります。詳しくは埋蔵証明書の記事を見てください。費用の内訳は墓じまいの費用の記事、自治体の補助は補助金の記事で説明しています。

合葬墓の例として、広島市と郡山市の公式ページを比べます。

表は左右に動かして読めます。

項目広島市(令和8年度)郡山市(東山霊園)
使用料焼骨1体につき5万円。管理料を含む個別埋蔵室1体用 9万5,000円。直接合葬室 4万5,000円
埋蔵の仕方共同で埋蔵個別埋蔵室は使用許可日から20年間は骨壺のまま埋蔵し、その後合葬室へ。直接合葬室は最初から合葬
生前の申込みできないできる
取り出し・改葬受け付けた焼骨の返還と改葬はできない個別埋蔵室にある間は返還が可能。合葬室に入ると返還できない
承継者使用権は移転できない使用権を承継する人は必要ない
申込み資格(一部)市内に住所がある人など。焼骨は原則として親族のもの1年以上市民であることなど。東山霊園の一般墓所の使用者は、その墓所の返還が条件

「永代供養」という言葉の中身は、施設によって違います。上の表のように、遺骨を取り出せる期間があるかどうか、合葬の時期がいつか、管理費がかかるかは、契約ごとに確かめます。自治体の合葬墓は、住所や親族関係などの申込み資格が決まっています。民営の永代供養墓の条件は、運営者の公式の案内で確認してください。

生前に決めておくこと

万年筆のペン先の拡大
写真: Ben FrantzDale / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

厚生労働省の事務連絡は、無縁墳墓を生まないためには、縁故者の情報を事前に把握しておくことが有用だと書いています。期限付きの墓地を設ける方法にも触れています。墓を持つ側でも、次の点を元気なうちに決めておくと、残された人の負担が減ります。

  • 墓地使用者の名義と、今の承継者の有無。墓地の管理規則の確認
  • 墓じまいをするか、承継者を決めるか、合葬墓に移すかの方針
  • 遺骨の行き先。郡山市のように生前申込みができる施設と、広島市のようにできない施設があります
  • 親族への連絡先と、墓の場所・管理者の連絡先をまとめたメモ
  • 墓石の撤去費用の見積り。管理料の滞納がないかの確認

管理料を長く納めないままにしておくと、川崎市の例のように、無縁化の判断材料にされる場合があります。使用を続けないと決めたなら、滞納を残さず、使用許可の返還と改葬の順番を管理者と相談してください。

手続きに不安があれば、自治体の生活衛生担当、墓地の管理者、行政書士などに相談します。国民生活センターは、墓じまいには改葬のほかに墓地の原状回復などの手続きも必要になるため、契約内容をよく確認し、現在の墓地の管理者と話し合って包括的に進めることを勧めています。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。川崎市の資料は案の段階のもので、現在の運用は市の霊園事務所に確かめてください。

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