墓じまいと散骨の手引き

散骨を自分でする場合と業者に頼む場合 法律・粉骨・自治体の条例の確かめ方

内容の確認日: 2026年11月4日

散骨を自分でするか業者に頼むかは、場所と手間で決めます。海や山に遺骨をまく行為そのものを禁じる全国一律の法律はありません。ただし、自治体の条例が禁じていたり、まく場所の所有者や漁業者とのトラブルになったりすることがあります。自分で行うなら、粉末にした遺骨をどこにまくかと、その場所の条例を先に確かめます。

業者に頼む範囲は、粉骨、船や車の手配、当日の進行、散骨証明書の発行などです。厚生労働省の「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」は、契約を文書で結ぶことなど、事業者に求める事項を挙げています。この記事は一般的な情報で、個別の判断は行政書士や弁護士、お住まいの自治体の担当窓口などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

散骨は法律でどう扱われているか

江ノ島シーキャンドルから見た太平洋
写真: SuFlyer / CC0(Wikimedia Commons)

関係する法律は2つあります。

1つは墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)です。第4条第1項は「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」と定めています。散骨は、土の中に収める「埋蔵」とは別の行為と考えられています。

もう1つは刑法です。第190条は「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する」と定めています。遺骨を捨てる行為は、この規定に触れるおそれがあります。

では散骨は刑法190条に当たるのでしょうか。出どころの分かる見解は次のとおりです。

  • 平成10年(1998年)の旧厚生省の懇談会報告書: 「刑法の遺骨遺棄罪は社会的な習俗、倫理に関するものであり、相当な節度をもって行なう場合は、散骨を処罰の対象とすることはできないと解されている」(総務省の2023年の調査報告書と、地方自治研究機構の解説が引用しています)
  • 法務省: 平成3年(1991年)10月の記者会見で法務大臣が、刑法190条は社会的習俗としての宗教的感情などを保護するのが目的であり、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題はない、という趣旨を述べたとされています

法務省の見解は、地方自治研究機構の解説による紹介です。同じ解説は、旧厚生省や厚生労働省、法務省が公式な文書でこの見解を示したものは確認できないとも書いています。この記事の確認でも、法務省の公式文書は開けませんでした。「法務省が認めている」と言い切らず、「節度をもって行う場合は問題ないと解されている」と受け止めるのが正確です。

自分でする場合に確かめること

大野山山頂から望む相模湾
写真: Tmv / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

自分で行う場合は、国のガイドラインの内容が目安になります。このガイドラインは事業者向けで、個人に適用すると書かれているわけではありません。それでも、まく場所や遺骨の形について示す考え方は、個人が行うときの参考になります。

  • 焼骨は、その形状が見えないように粉状に砕く
  • 陸上は、あらかじめ特定した区域で行う(河川と湖沼を除く)
  • 海は、海岸から一定の距離以上離れた海域で行う
  • 地域住民、周辺の土地所有者、漁業者などの利益や宗教感情を害さないよう配慮する
  • プラスチックやビニールなどを原料とする副葬品を投下しない

確かめる順番は次のとおりです。

  1. まく場所の自治体に、散骨を規制する条例や要綱があるか問い合わせる
  2. まく場所が誰の土地か、漁業者が利用している海域かを確かめる。私有地なら所有者の承諾を得ます
  3. 遺骨を粉状にする(粉骨)。細かさの目安は、上のガイドラインの「形状が見えない」ことです
  4. 他の人の迷惑になる時間帯や人の多い場所を避ける

墓じまいで取り出した遺骨を散骨する場合、改葬許可は必要ないというのが厚生労働省の見解です。総務省の2023年の報告書が、厚生労働省の見解として載せています。墓じまいの手続きは改葬許可申請書の書き方と必要書類で説明しています。

どの場所でまいてよいかを国が一律に決めてはいません。総務省の同じ報告書は、散骨の可否や方法は、依然として各地方公共団体の裁量に委ねられていると書いています。

自治体の条例の例

日野市役所の庁舎
写真: 根川孝太郎 (Kotaro Negawa) / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

地方自治研究機構の解説(2026年4月1日更新)によると、散骨を規制する条例は、北海道長沼町、埼玉県秩父市、静岡県熱海市など十数の自治体にあります。条例の型は4つに分かれます。散骨を禁止するもの、原則禁止して届出で例外を認めるもの、散骨場の経営を許可制にするもの、その両方を組み合わせたものです。

自治体の公式ページで確かめられた例は2つです。

  • 秩父市: 「秩父市環境保全条例」を改正し、平成20年12月18日から、墓地以外の場所で原則として散骨(焼骨を一定の場所にまくこと)をしてはならないとしています。対象は市内で焼骨をまこうとするすべての人です
  • 熱海市: 平成27年7月1日の「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」で、海洋散骨を業として行う者に、熱海市内の土地(初島を含む)から10キロメートル以上離れた海域で行うことなどを要請しています。要請であり、条例の罰則ではありません

地方自治研究機構の解説は、秩父市の例外の条件も紹介しています。事業者が設けた場所でないこと、隣地の所有者の同意を得ているか隣地境界から100m以上離れていることなどを満たし、市長に届け出る場合です。詳細は市の規則に書かれているので、実際に行う前に市の窓口で確かめてください。

条例は自治体ごとに違い、改正されることもあります。お住まいの自治体と、散骨する場所の自治体の両方に、条例や要綱の有無を問い合わせてください。

業者に頼む範囲と契約で見る点

衣笠山公園から見た東京湾フェリー
写真: Yamaguchi Yoshiaki / CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons)

業者に頼むと、船や車の手配、当日の進行、場所の確認を任せられます。国のガイドラインは、散骨事業者に次の点を求めています。契約前に、業者の説明がこれに沿っているか確かめます。

ガイドラインの事項確かめること
約款の整備と公表契約内容を書いた約款を見せてもらえるか
契約の方法文書で契約するか
費用の明細書契約書に費用の明細書が付くか
解約約款に解約の条件があるか
散骨証明書散骨のあとに証明書が交付されるか
安全の確保海の場合、教育訓練を受けた従事者の配置や、ライフジャケットなどの用意があるか
実施状況の公表件数や場所を年度ごとにホームページなどで公表しているか

ガイドラインは、法的な義務を定めたものではありません。事業者に求める事項を示したものです。業者の説明に引っかかる点があれば、書面で答えてもらってください。

粉骨は、業者に頼む場合と自分でする場合があります。業者の料金や、代理・合同・貸切といったプランの違いは海洋散骨の費用に、4社の公式料金とあわせてまとめました。

自分でするか業者に頼むかの分かれ目

鎌倉付近から望む相模湾
写真: P. Hughes / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

分かれ目になるのは、次の3つです。

  • 場所: 自分の土地や、条例で認められた場所があるか。海にまく場合は、沖合の船が必要になる
  • 手間: 粉骨、場所の確認、周辺への配慮を自分で負えるか
  • 確かさ: 散骨証明書など、行ったことの記録を残したいか

自分でするなら、費用は抑えられる可能性があります。その分、場所の確認と周囲への配慮は自分の責任です。業者に頼むなら、費用は上がります。そのかわり、船の手配や当日の進行、証明書の交付を任せられます。どちらが合うかは、家族の考えや距離、遺骨の数によっても変わります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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