寺が埋蔵証明書を出してくれないとき 改葬許可の「準ずる書面」と相談先
寺が埋蔵証明書を出してくれないときも、改葬の許可を受ける道はあります。墓地埋葬法施行規則2条は、管理者の書面について「これにより難い特別の事情のある場合」は、市町村長が必要と認める「これに準ずる書面」でよいとしています。
ただし、何を準ずる書面と認めるかは、申請先の市町村が決めます。厚生労働省は令和8年1月に、代わりの書面の例を示す事務連絡を出したと、総務省の資料にあります。まず市町村の窓口へ、経緯をまとめて相談してください。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士・行政書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
規則2条が求める書類と「準ずる書面」

改葬には、市町村長の許可が要ります(墓地埋葬法5条1項)。許可を出すのは、遺骨が今ある場所の市町村長です。
施行規則2条2項は、申請書に次の書類を付けるよう定めています。
- 墓地または納骨堂の管理者が作成した、埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面。これにより難い特別の事情があれば、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面。
- 墓地使用者以外が申請する場合は、墓地使用者の承諾書、またはそれに対抗できる裁判の謄本など。
- その他、市町村長が特に必要と認める書類。
1つ目の書面が、いわゆる埋蔵証明書です。申請書の書き方や書類の全体像は改葬許可申請書の記事にあります。この記事は、1つ目の書面が管理者から得られないときに絞ります。
厚生労働省の考え方 管理者が拒んだ場合

総務省東北管区行政評価局の資料(令和8年1月30日)に、国の取り扱いが整理されています。資料によると、墓地等の管理者が事実の証明を拒んだ場合、市町村は極力、管理者に対して証明書を出すよう指導すべきとされています。それでも拒んだときは、「これに代わる立証の書面」で取り扱って差し支えないとされています。根拠は、昭和30年2月28日付の厚生省環境衛生課長の回答です。
同じ資料は、厚生労働省が令和8年1月23日付の事務連絡で、埋蔵証明書の添付により難い特別の事情があると認められる場合の取り扱いのQ&Aを、地方公共団体に周知したと書いています。Q&Aで示された代わりの書面の例は、墳墓の写真と、埋蔵証明書を提出できない経緯を記した申述書などです。
この記事では、事務連絡そのものを開いて確かめることはできませんでした。内容は総務省の資料に書かれた範囲です。実際の扱いは、申請先の市町村に聞いてください。
同じ資料には、現場の状況も書かれています。東北管内の9市町村に聞いたところ、寺院に証明書の発行を拒まれた例で、代わりの書面で許可した市町村がありました。一方で7市町村は、この回答を把握していませんでした。代わりの書面として何が適当か分からない、という市町村の意見もありました。窓口の担当者が、この扱いを知らない場合もあるということです。
自治体の案内の例 丹波市・岡崎市・東京都

市町村の案内を3つ見ます。代わりの書面の扱いは、案内の形がそれぞれ違います。
- 丹波市(兵庫県、2025年12月17日更新): 個人墓地から改葬する場合は、埋蔵証明書の代わりに「埋蔵証明書をとることができないことの申出書」が要ります。墓地の位置がわかる地図と墓地の写真も求められます。寺院などの管理者が証明を拒む場合の扱いは、このページから読み取れません。
- 岡崎市(愛知県、2026年7月1日更新): 申請者が所有する敷地の墳墓から移す場合は、申述書に焼骨等の一覧と墓地・墳墓の現状写真を付けます。管理者の証明が得られない場合の取り扱いは、ページに記載がなく、保健政策課への確認が案内されています。
- 東京都消費生活総合センターの「東京くらしねっと」(2024年5・6月号): 寺に改葬を伝えたところ承諾されず、埋葬証明書を発行してもらえないという相談の回答です。管理者との間でトラブルになり証明書が得られない場合でも、区市町村長が認める別の書類で申請できることがあるとし、経緯をまとめて区市町村の担当窓口に相談するよう勧めています。
この3つは、同じ問題への答えではありません。丹波市と岡崎市の申出書・申述書は、主に自分の敷地や個人墓地の場合です。寺が拒む場合の書式は、ページにあるとは限りません。だからこそ、窓口で個別に確かめる必要があります。
話し合いの記録を残す

市町村に相談するとき、東京都の案内は「経緯をまとめる」ことを勧めています。国の資料に挙がる代わりの書面にも、証明書を出せない経緯を記した申述書があります。経緯を後から正確に書くには、その場その場の記録が頼りになります。次のような形で残します。
- いつ、誰に、何を頼んだか。日付と相手の名前、方法(電話・面会・手紙)を書く。
- 相手がどう答えたか。断られた場合は、理由として言われた言葉をそのまま書く。
- 書面で頼んだ控え。証明書の発行を頼む手紙やメールは、写しを取っておく。
- 寺や霊園との使用契約書、規約、請求書。離檀料などの請求があれば、その書面。
- 墓地と墓石の現状の写真。
感情的なやり取りは、記録に向きません。事実だけを短く書くと、窓口でも伝わります。
電話だけで頼んでいる場合は、まず書面で、証明書の発行をお願いする手紙を出します。手紙の控えは、市町村に見せる資料になります。書式は決まっていません。
寺との間で、費用の話がもつれているときは離檀料の記事で、確認の順番を説明しています。費用の全体像は費用の内訳の記事にあります。
消費生活センターに相談する

市町村の窓口でも進まず、寺との間の話が止まっている場合は、消費生活センターにも相談できます。最寄りの窓口は、消費者ホットライン「188」につながります。国民生活センターのページによると、188は全国の消費生活相談窓口につながる番号で、通話料は電話会社のサービスによって違います。IP電話など、一部の電話からはつながりません。
国民生活センターの「墓・葬儀サービス」のページには、寺院から高額な離檀料を請求され手続きが進まない、という相談の例が載っています。ただしこのページには、改葬の手続きの助言までは書かれていません。改葬の許可そのものは、市町村の窓口の仕事です。消費生活センターには、寺とのやり取りの困りごとを相談します。
相談のときは、前の章で書いた記録を手元に置きます。寺とのやり取りの日付、受け取った書面、請求の内容です。
話し合いがこじれて、法的な判断が要るときは、弁護士に相談します。管理者に証明の義務があるかどうかは、個別の事情で変わります。この記事では判断できません。
出典
- 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第5条・第8条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年厚生省令第24号)第2条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024
- 総務省東北管区行政評価局 墓じまいに関する情報収集結果(令和8年1月30日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001053241.pdf
- 丹波市 改葬について(2025年12月17日更新) https://www.city.tamba.lg.jp/soshiki/kankyoka/gyomuannai/10/2027.html
- 岡崎市 改葬許可申請書(2026年7月1日更新) https://www.city.okazaki.lg.jp/kurashi/fukou/1012351/1004483.html
- 東京都消費生活総合センター 東京くらしねっと 2024年5・6月号 相談の窓口から https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/2405_06/soudan.html
- 国民生活センター 墓・葬儀サービス(2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/sougi.html
- 国民生活センター 消費者ホットライン188 https://www.kokusen.go.jp/map/index.html
いずれも2026年11月4日に確認しました。厚生労働省の事務連絡(令和8年1月23日付)は本文を開けていません。